05:月乃葉の場合[03]



翌日、月乃葉は何故かまた教会に来ていた。
日曜学校も終わり、子供達が帰って静かになった教会。

「こんにちは、月乃葉です。えっと、シスターマリアは…」
「あら、月乃葉さん。こんにちは。マリアは今中にいるわよ」
「お邪魔しても…?」
「ええ、どうぞ。そして、いつもありがとう。」
「いえ、こちらこそいつもお世話になって…!」

慌てる月乃葉にシスターは笑う。
そしてさ、と教会内に入ることを促してくれた。

「マリア、こんにちは」
「あら月乃葉!こんにちは、珍しいわね」

月乃葉がお菓子の配達以外で来ることはそうない。
たまに遊びに来るが、それもどこか申し訳ないように思われている、とマリアは思っていた。
つまり、マリアは月乃葉に気を使われていると感じていたのだ。
だから突然でも訪ねてきてくれたことを嬉しく思う。

「えっと…突然で悪いのですが…」
「なぁに?どうしたの?」
「その服、貸してください!!」
「…はい?」

あまりに突然で突飛なお願いに、マリアは思わず聞き返してしまった。
当の月乃葉は申し訳なさそうに顔を真っ赤にして下を向いてしまっている。

「えっと…何故そうなったのかしら?」

マリアは落ち着いて、月乃葉から事情を聞いてゆく。
そして一通り話を聞いた後、なるほど、とようやく理解をした。

「きちんと返しますから…お願いします」
「うーん…ちょっと待ってね」

そう言うとマリアは月乃葉に立つようにいい、横に並ぶ。
どう考えても自分の服のサイズと彼女の服のサイズは違う。
たぶん、月乃葉の方が2から3サイズは大きいだろう。

「やっぱりダメですか…」
「いえ、そんなことないわよ。ただちょっと、サイズが…」
「あ…」

月乃葉はようやくマリアが困った顔をしている理由を理解した。
マリアはどちらかというと小柄で、よく高いところにあるものが取れなくて困っている姿をみかけた。
…二人はそれで知り合ったわけだが。

「うーん、でも予備があると思うわ。ちょっと見てくるわね」
「ありがとうございますっ」
「いいのよ、私も嬉しいの」

月乃葉はどうしてマリアが嬉しいのかがわからなくて考え込んでしまう。
そうしている間に彼女は部屋を出てサイズがぴったりのものを探してきた。

「うん、似合うわね」

マリアがそう言うと、月乃葉は恥ずかしそうに笑った。



+ To be continued +

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