04:続・不思議な招待状 [02]



 オレの記憶が確かなら、あんな郵便屋が今まで家に
手紙を届けに来た事は一度もない。

 それに、受領書もいらない手紙1通だけなら何でわざわざ・・・?


 パサパサ・・・


「・・・何か見覚えがある顔だった様な・・・」


 パサパサ・・・・


「・・っかしいな・・・」


 ばさっ!!

「!!?」

 突然左手に持っていた封筒が音を立てる。うろたえた拍子に思わず手を放すが、
それは床に落ちる事なくオレの目の高さにまで浮き上がった。

 そして・・・・

 ぼん!

『ラッっドーーーーっ♪』

「!!」

 魔力煙と突然顔に何かが貼り付いて来た様な感覚で、視界を塞がれる。
でこぼこした何か丸い物が丁度顔に当たっていた。それは左右に動いているのか
それとも回っているのか、オレの顔には短い間隔で硬い感触が行ったり来たりしている。

 忙しく動くそれを両手でしっかりと掴み、ゆっくりと顔から引き剥がすと。


「・・・・・・ジャック!!」

『おひさしぶりーー!』

 去年オレに招待状を運んで来た、カボチャのランタンに
小さな羽を生やした様な姿の精獣。顔に何か擦られる様な感触は、
コイツが出て来てオレの顔にすり寄ってたからか・・・・

『今年もラッドに招待状!ほらっ』

 ジャックが口の空洞にくわえた封筒を、オレは改めて見た。

『るーくがね、ポストの中じゃ手紙の中にいるオイラが狭いだろうって、直接ラッドに!』

 嬉しさからなのか元からテンションがこうなのか、ジャックは落ち着きなくパタパタと
オレの回りを飛びながら言った。


 ・・・・・あれ?


「・・・・・・待て、じゃあ」

『あっれー??気付かなかった?るーくだよ』


 あの、郵便屋の正体は。


 変身術なのか髪の色も服も違ったから判らなかった。


 だが・・・・アイツは確かにオレの名前を知っていた。


『お耳もはみ出してて、すぐバレちゃうってオイラ思ったんだけど』

「・・・・今流行ってるファッションか何かかと・・まさか本物の耳だとは・・・」

『るーく、すねちゃうよー。せっかくラッドに直接届けにきたのに、
気付いてもらえなかったーって』

「・・・・・何かそう言われると罪悪感が・・・」


 しかしあそこまであからさまだと逆に判らないんだな・・・


『またパーティーに来てよラッド、みんな待ってるよ』

「・・・・ソニアは?去年アイツにも来ただろ、招待状」

『だってソニアカゼ引いてるし』


 何の気もない様にジャックは言う。・・・・・何で知ってるんだ・・・・?
上の部屋からまた1つ、大音量のクシャミが響いて来るのが聞こえた。


『魔法使いは何でもわかるのー♪』

「オレは判らないけど」

『ウサギさんのお耳はとっても良いのー』

 パタパタと飛んで来たジャックがそこを休憩場所とみなしたのか、
ちょこんとオレの頭の上に乗って一旦羽を畳む。

 ・・・・・思ったより少し重いが、それをどかす事をしないでオレは聞いた。

「・・・・・なぁジャック、“あっち”に薬屋とかそれ専門の知識を持つヤツっているのか?」

『うん、そっこー性の薬屋さんからおいしいお菓子屋さん、えーよー満点の
料理を出してるお店まで何でも揃うよ』


 ・・・・・これ以上長引いてたらアイツの風邪はオレにまで飛び火しかねない。

 ただでさえ魔物が増えて忙しいこの時期・・・どうせオレが「行く」と言えば
どんな宿題に追われていようが、足を引き摺ってようが「一緒に行く」と
言い張るソニアの事だ。指令がいつ来るか判らない以上―
薬を無理矢理口に押し込んででもさっさと風邪を治してもらう必要がある。

「・・・・判った、久々にルーク達の知恵を借りに行くか・・行こうジャック」

『うんっ』

 オレは首元に掛けたレッドノールを少し揺らしてジェリスを呼ぶ。
ジェリスは腕組みしつつ面倒そうに頷いた。ユイも先に上がって行ったらしい2階から
ひらひらと手を振って“大丈夫だよ”と示した。

『楽しんでおいでよ』

『・・・・・土産の1つ位は買って来い』

「あぁ、大体こっちの時間なら夕方すぎまでには戻れると思うから・・・
ジャック、ちょっと着替えて来るからどいてろ」


 頭からさっさとジャックをよけ、オレは衣装を探しに自分の部屋へ戻って行った―。

「・・・うわああぁん、ラッドぉ、僕を置いてくなんて、
そんな良い所行くなんて酷いじゃんか〜・・っ」

 隣の部屋から嘆きの声が聞こえて来るが・・・・どうやらアイツはオレが
もうこの家を出たと思っているらしい。ユイに聞いたのか・・・?

 まぁ知った事じゃないな。


 クローゼットを開け、ハンガーに掛けてあったコートを取りながら・・・
オレは改めてジャックに渡された招待状を持って再び1階に下りて行った。










『・・・・・楽しみにしてるよ、ラッド』



+ To be continued +

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