05:月乃葉の場合 [02]



帰ってきたアシュレはいつになくご機嫌だった。
彼女が怒ったりする姿はほとんど見たことがないけれど。

「ふふ、月乃葉、あなたいいもの拾ったでしょー♪」

カードの話をする前に言われたので、一瞬何のことかと考えてしまった。

「あのカードですか?ハロウィンパーティへの招待状とか…」
「そうそう、そのカードよ!私も五百年生きていて本物を見るのははじめてだわ!」
「何か特別なんですか?そもそもハロウィンパーティって…」
「仮装をして、お菓子を持って、イタズラをする…ってとこ?」
「わけわかりません…」

月乃葉が人間の住む場所に出てきてから、五十年。
ハロウィンというものが10月31日に行われる祭りだということは知っている。
その頃になるとアシュレはかぼちゃ型のクッキーやらパンプキンパイやらを作ったりする。
だが祭りが一体どういうものなのかは知らない。

「ハロウィンっていうのはねー」

ご飯を食べながら、アシュレは一からハロウィンについての説明を始めた。
わかりやすく、丁寧に、そしてトリビアも交えつつ。

「で、あなたは仮装してそのパーティに行くことができるのよ!」
「これ…すごいんですね…」
「月乃葉の仮装、どんなのがいいかしらっ」

夕飯を終えたアシュレは紙と鉛筆を取り出し、何やら描き始める。
新作のお菓子を作るときと一緒で、デザインや材料が書いてあるがこれは…

「アシュレ、私こんなの着れません…」

やたらと肌を露出していたり、ミニスカートだったり…
月乃葉が苦手な部類の服ばかりだった。

「えー、絶対可愛いのに!」
「無理です…」

アシュレは次々にデザイン画を書き出していくが、どれも月乃葉には刺激が強いものばかりだった。

「仮装しなきゃパーティには行けないのよ?」
「でもこれは…恥ずかしい…」
「むー…私の魔女の服ってのもあるけど、それじゃつまんないしー」
「つまる、つまらないの問題なんですか?」
「大問題です!」

アシュレはやたら真面目な顔をして答える。

「やっぱり月乃葉の綺麗な耳と尻尾は生かしたいのよねーそうなるとー」
「今は隠せるようになりましたよ」
「別に隠さなくてもいいと思うよ、このパーティではね」
「そうなんですか…」

アシュレは鉛筆でとんとんと机を叩く。

「あ、あれはいいかも」



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