ラナ「こちらこそ、招待してくれてありがとう。おれはラナ、で、こっちの赤いのが」
ヴァルブラス「オレ様はヴァルブラスだ!だがこれは仮の姿で、本当は世界中の炎を……」
ラナ「それは聞き飽きたよ……あ、二人とも気にしないでね。いきなり変な事を言い出すのはいつものことなんだ」
ヴァルブラス「ヘンな事とはなんだァ、ヘンとは!」
ラナ「(小声で)いきなり竜だの何だの言われたって、事情を知らない人は困るだろ。今日は大人しくトカゲっていうことにしとけよ」
ヴァルブラス「な、なんだとォ!?納得いかねェ!」
ラナ「よろしく、ルークさん、パレットさん。それに、そこの青い子も……おい、ブラス、何だよその不機嫌そうな顔は」
ヴァルブラス「海の生き物はルーチェの手下だ」
ラナ「まったく、すぐこれだ。おれは海って見たことないから、魚は詳しくないんだけど……ダイちゃんっていうのかい?可愛いね。ブラスもこれくらい愛嬌があったら良かったのに」
ヴァルブラス「てめェは一言多いんだよォ!」
ラナ「え?パレットさんが作ったの?すごいなぁ、とても作られたものには見えないよ」
ヴァルブラス「ムシするなってェの!」
ヴァルブラス「腐れ縁だぜェ、オレ様が竜に戻るには必要な家来だからよォ」
ラナ「……」
ヴァルブラス「いててて、おいコラ、引っ張るんじゃねェ!」
ラナ「本人はそんなもん無いって言ってるけど……おれとしては、あれが女だったら女性不信になるね」
ルーク「はは」ラナ「世界地図でいうと真ん中よりちょっと西の方にある、ソルトーっていう町から。商人がたくさん集まる砂漠の町なんだ。一応、おれも商人なんだけど、商売って難しいんだよね。計算とか」
ヴァルブラス「割り算もロクにできねェからな」
ラナ「しょうがないだろ、人には得意不得意ってものがあるんだ」
ラナ「あのかぼちゃ君だね。最初はちょっと驚いたけど、慣れてみると結構乗り心地がいいよね。ウサギトカゲより揺れも少ないし」
ヴァルブラス「オレ様は絶対慣れる気がしねェぜ……」
ラナ「おれの故郷……にはあるかどうか分からないけど、ソルトーにはそういった習慣はなかったよ。町によく来るニライっていう旅人の兄ちゃんが物知りで、その人に教えてもらって初めて知ったんだ」
ヴァルブラス「変わってるよなァ、人を脅して飯を奪い取る祭なんてよォ」
ラナ「……何か違うんじゃないか、それ」
ヴァルブラス「どう違うってェんだ?」
ラナ「そりゃあね。郵便配達人のマクスに聞いてもそんな手紙は知らないっていうし……」
ヴァルブラス「そもそもよォ、どうやって行くか書いてねェから、どうやって行くか悩んじまったぜェ。迎えが来るなら来るって書いておけよなァ」
ラナ「そうだね。一番ありがちなのらしいからやめとけっていう奴もいたんだけどさ」
パレット「あら、同じ吸血鬼だとしても皆 不思議と違うのよね。そういう部分を見るのって楽しいと思うわ」ラナ「ありがとう。普段こういうキッチリした服って着ないから、ちょっと動きにくかったり……さっき転びそうになったよ」
ヴァルブラス「あんまり文句言うと、後であの兎女が怖いぜェ」
ラナ「うっ……そ、それにしても、こういう重そうな衣装を毎日着てる人は凄いんだね。ルークさんたちの服も結構凝ってるみたいだけど、動き辛くないの?それともこういう衣装には慣れてるのかな」
ラナ「うん、そうだね。ついでに言うと耳もしっぽも本物だよ。おれは紅蓮の民だから……えぇと、トカゲ人みたいなものって言ったらいいかな。見た目がこの通りだからね、実はちょっぴり不安だったんだ。変に思われないかなって……」
ヴァルブラス「にしてもよォ、トカゲ人って何かマヌケな感じがするよなァ」
ラナ「うるさいな、そういうお前だって赤トカゲだろ」
ヴァルブラス「んなっ」
ラナ「まぁ、そんなわけで、最初はドラゴンになればいいじゃんっていう意見も仲間内ではあったんだ。おれもその方がカンタンだから良かったんだけど、そこのブラスが」
ヴァルブラス「このオレ様をさしおいて竜になるなんざァ絶対許さねェ!」
ラナ「……と、こんな調子で」
ラナ「バラとグラスは持ってるとそれっぽいかなって。本で見ただけだから、詳しくは知らないんだけどさ……ワイン?まさか、おれはお酒飲めないからね、トマトジュースだよ」
パレット「トマト・・・!」ヴァルブラス「ちくしょォォ!わ、笑うなァ!オレ様だって好きでこんなボロ布一枚になったわけじゃねェ!」
パレット「ボロ布だなんて!見えないわよ」ラナ「近所の裁縫屋さんに特別に作ってもらったんだ。ウサギ人みたいな感じの人で、ルークさんみたいに兎耳の人なんだけど……あぁ、いや、なんでもないよ。何か言うと後が怖い気がする」
ヴァルブラス「もんのすげェ強気のガサツ女なんだがよォ、こういう手先だけは器用なんだよなァ。それにしてもオレ様のコレはねェと思うんだが」
ラナ「ブラスは最後の最後になって一緒に行くって言い出したから、作ってもらえなかったんだ。使えそうなのを家で探して、そのオバケ衣装が精一杯だったんだよ」
ヴァルブラス「埋もれる前に食い尽くしてやるぜェ」
ラナ「勿論冗談なんで、気にしないでね。お菓子は……甘いすぎるものには良い思い出がないけど、食べられないわけじゃないよ。好きなのはどちらかというと辛いのやしょっぱいのかな。ソルトーは乾燥してるから食べ物にも乾き物が多くて、「プリン」とか「ケーキ」とかいう甘い種類のお菓子はあんまりみた事がないんだ」
ヴァルブラス「ホラよォ、土産だぜェ。"トゲなしサボテン煎餅"だ。ん?なんだァ、急に静かになったな」
ラナ「……だ、だからやめようって言っただろ、絶対受けが悪いっておれは思ったんだ!」
ヴァルブラス「だが街では人気ナンバーワンなんだろよォ」
ラナ「こっちの人達にも評判がいいとは限らないだろ……」
ラナ「悪戯か……こういうのは、おれより友達の方が詳しいんだけどね。そういえば前、寝てるブラスの顔にペンでヘンな顔を落書きしたことがあったっけなぁ」
ヴァルブラス「な、ななな、なんだとォ!?初耳だぞォ、一体いつの話だ!」
ラナ「忘れた。でも、鏡も見ないから一日中そのままだったね。流石に可哀想かなって思って、寝てる間に消してあげたけど」
ヴァルブラス「こ、この野郎……覚えてやがれ」
ラナ「他にはどんな人達がいるのかな?色んな人と仲良くなってみたいね」
ヴァルブラス「態度次第では家来にしてやってもいいぜェ」
ラナ「……」
ヴァルブラス「おい、おい!だから引っ張るなって言ってんだろォ!?」
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