贈り物の日
ドキ★ ヲトメだらけの料理教室(みえさん。)
レゼル / カルド / フェリス
無我(藤縞藤)
ロアノート
精霊達への贈り物〜(蒼霧 夜雨)
リーフェン / 樹の精霊
(『何作ってるのかな…?』)
(『良い匂いするねー』)
(『そうだね…』)
(『お菓子かなー』)
(『そうだったら嬉しいね…』)
(『そうだねー』)
(『『一体何だろう?』』)
(『森の動物達の所へ遊びに行ったと思っていたが、いつの間に帰って来たのだろう…さっきから随分と熱心にこちらを見ているな…』)
(…あの二人の為にも早く作らないといけないな…)
『さて…』
『待たせてしまったね二人とも』
(『ビクッ』)
(『リーフェン気づいてたんだね…/何作ってたのー』)
『どうやら皆に贈り物する風習が有る様だからねこれを作っていたんだ、私からの贈り物…受け取ってくれますか?』
(『『もちろん!』』)
ふたつの贈り物(穐亨)
アレフ・ヒロ
「贈り物?」
アレフが訊ねると、「そうだよ」と、目の前の小さな少女が頭を上下させた。
「あのねぇ、“ねんまつ”はねぇ、おくりものをする日なんだよ」
どこか得意げに、少女が胸を張って説明する。それに、「へぇ」と感心しながらアレフは頷いた。
目の前にいるのは、この町にいる間、何度か見かけたことのある少女だった。白い髪に白い肌、風変わりな着物を着ており、そのうえ角を生やしているという一風変わった外見のため、なんとなく覚えていた少女――更に言えば、それだけの関係でしかない少女は、アレフが傍を通りかかると、いきなりタックルして近づいてくるなり、花をくれたのだった。
小さな白い花。明らかに、売買されるようなものではないとわかる、小さな野草。きっと、年末に贈り物をし合うという習慣の存在を町の人からでも聞かされた少女が、一生懸命に摘んだものなのだろう。
「そっか……そんなものがあるんだ」
アレフが独りごちた頃には、少女は近くを通りかかった青い髪の青年の方へと駆けて行ってしまっていた。どうやら、見かける人全員に配る心積もりらしい。
「ミルドくーんっ! お花あげるー」
「お、ヒロじゃないか。どうしたんだ急に……」
そんな会話を背後に聞きながら――更に、貰った小さな花を眺めながら、アレフも歩き出した。
「贈り物……かぁ……。私も、何かしたいなぁ」
真っ先に思い浮かんだのは、黒い毛皮の犬――タナトスのことだった。友達であり、家族である彼には、ずっと昔に贈り物をしたことがある。彼が今もつけてくれている赤い首輪がそれだ。まさかいまだに大切にしてくれているとは思っていなかったため、再会した際にそれを見たときは、心底嬉かった。
また、彼になにかプレゼントしようか――あの日勝手にいなくなってしまった自分のことを、ずっと待っていてくれた、そのお礼として。
それに、もう一人。アレフには感謝の気持ちを伝えたい相手がいた。
花を見つめながら、アレフは立ち止まり、少し考え込んだ。それから「よし」と頷き、その場から少し離れた場所にある、窯元の方へと歩き出したのだった。
――そして、一時間ほども経った頃。
窯元から出てきたアレフの手には、同じ大きさをした二つの小箱があった。その中には、揃いのカップが入っている。
一つは、彼の大切な仔犬だった彼に。
そして、もう一つは――仔犬だった彼を、孤独にしないでいてくれた女性に。
大切な二人に送るため。夕暮の近づいた町の小路を、普段よりも足取り軽く、アレフは歩いて行った。