ファンタズマゴリアについて

【 Phantasmagoria 】
  (夢の中などの)次から次へ移り変わる光景[幻影、幻想];走馬灯 (ライトハウス英和辞典)


 私がこの単語を知ったのは、ルイス・キャロルの発行した詩集のタイトルからです。とは言っても、そういうものがあったという記述で知っているだけですが・・・。 心からリスペクトしつつ、意味としても今回の作品をこれ以上的確に説明してくれるものはないと思います。

 こういうのって他の方でも同じなのかは分かりませんが、私の中で私の創作作品は全て繋がっていて、いつもイメージは流れるように出てきます。私の頭の中ではどの話も映像で浮かんでくるので、いつも頭の中に流れているその映像を少しでも紙面に表現できれば・・・という思いでこの作品が仕上がりました。

 今のところ完全に異世界にあるのは機械仕掛けの街ぐらい(楽しき悪夢も微妙に・・・)で、それ以外の話はこの地球上のいつかの時代のどこかで起こった事、というイメージでおります。 たとえ異世界だとしても、夢はきっと世界を越えて繋がると信じている。 だから彼らの人生はこの話のように、またはこの話だけでなく、どこかで繋がって絡み合っているのです。

 私はこれらの話をメルヘン・・・御伽噺とカテゴリに入れていて、それらの大事な部分は、人から人へと語り継がれていくことだと思っています。愛憎も夢も連鎖していく・・・後に続く。
 その表現の象徴として、アリスのお話にはアリスにお話をしてくれる人物が誰かしら登場します。アリス自身も、成長したら後へと繋げる役目を担うことになるのでしょう。

 勿論、私自身・・・そしてこれを読んでくれたあなたも、その連鎖の中の一人なのです。






以下はストーリー解説&補足です。
樟の反省や言い訳の他、それぞれの世界観やストーリー背景などについて少し深く説明をしております。
本当に長いので、興味がある方のみどうぞ。

P001-P007 RabbitHome(アリスとセレネ)

 まずは描きたかった第一のイメージ、おじい様(クレス)の部屋です。
 クレスは一応、地質学者という設定です。実際に詳しくはないのであまり突っ込んだ説明は避けますが(;)、彼は仕事でいろんな場所へ行っては、気に入ったものを集めていたようです。その中の一つが鉱石でした。というのをチラリ(?)と見せるのが目的だったりします。(ただそれ程裕福ではないのでクリソベリルとか当時高価なものは借り物でしょう)

 クレス亡き後、セレネは使用人一人と一緒にアリス達とは別の家で暮らしております。場所的にはあまり遠くないので、アリスは偶にこちらの家に遊びにきてはおばあ様から色んなお話を聞くのを楽しみにしているようです。
 ちなみにアリスは8歳、セレネは50歳ぐらいです。クレスは40歳前後で亡くなっていて、生きていれば60ぐらいです。 アリスをもう少し幼く可愛く描いてあげたいです。

P008-P010 機械仕掛けの街

 科学が発達しているのは国の中心セントラルのみで、パレットの住む街コッグタウン側はよりアナログな感じです。パレットは14歳にして修理屋を営んでいます(父親の店を引き継いだ)。幼い上に女の子が主人とあって新規のお客さんにはなかなか信用され難いものの、丁寧で誠実な仕事でコツコツとやっております。
 店舗兼工房には壜や引き出しが沢山あります。セントラルで不要となったガラクタが捨てられる”ジャンクロット”と呼ばれる場所から、使えそうなガラクタなどを引き取ってきてはパーツなどをバラバラにして瓶詰めにして分類したりしているようです。

 パレットは一人暮らしなので、家事は苦手ではありませんが、作業に没頭すると疎かにしてしまうようです。ご飯なども食べ忘れたりするので、そこはダイちゃんが注意してスケジュール管理などもしています。
 ダイちゃんが居れども、やっぱりお父さんが傍にいないのは寂しく思うこともあります。でもそんな気持ちも技術の向上へと向けて頑張っている前向きな女の子です。

P011-P014 鏡の中の道化師

 サーカス団の興行や表舞台ではなく、彼らの素の姿を描きたかったので舞台裏での姿です。(表舞台だと深紅も仮面姿ですし;) 翠緑が居るのは道具部屋ですが、本当はもっと荷物が山積みのはずです。もう少し描き込めばよかったと思っています;
 白銀は奇術(手品とか)担当で、隠し持っている箱の中になんでも入れてしまうという癖?があります。箱は4次元・・・。関係ないですが、この面子の中では深紅がダントツで外見年齢も身長も低いことになってます(笑)

 耳に角・毛深い(?)とか、人に近くとも人ならざる異形の姿の面子ですが。サーカス団というカタチを取ることで人間界でもさして疑われずに馴染むことができています。でも彼らが妖精界側の存在だというのが、分かる者には分かる・・・そのヒントの一つが彼らの垂れ幕にあります。
 漫画ではちょっと画面から見切れる位置にあるのですが(意味無い)、垂れ幕には一つのマークが描かれています。これはサーカス団ミラジリオンのマークではなく、妖精・精霊界のマークです。植物に種・風をイメージしており、天青石の粉が塗されています。これによって、彼らは自分達が妖精界の眷属であることを示しているのです。

P015-P019 魔女と弟子

 パルシパウラとスタンスールは魔女と人間ですが、住んでいる森は妖精・精霊界にあります。人間はもとより、魔法使いも一種の種族であり別の世界があるので、彼ら二人にとって妖精界は本来の故郷ではありません。でも、パルシパウラは森に長く住んでおり、住人達にも信頼されています。スタンスールは現在進行形で信頼関係を築いているところです。

 家の中には蔵書と薬・その材料が沢山です。家の中にも植物が自生しています。
 前述の妖精界のマークはこの魔女の店にも隠されています。 パルシパウラは正確には妖精でも精霊でもないのですが、薬屋としての商売相手は妖精達がメインなので。その為の目印というか・・・所謂、御用達のマークというニュアンスが一番近いと思います。

 魔女と魔法使い3人組は、同期。魔法使いの世界に住んで居たときからの友人達です。偶に遊びにきてはお喋りして騒いで帰るようです(笑)

P020-P022 楽しき悪夢

 魔女と弟子から楽しき悪夢へと移るシーンは、なんとなくこの中で一番のお気に入りです。
 楽しき悪夢はサイトRabbitHome創作作品全体のパラレルで、他創作品登場キャラと同じビジュアルのキャラがどんどん登場しますが、ストーリーは完全に独立しています。アレックスは本編ではもっとライトなノリなんですが、RHのことを考えていたらうっかりクールにしてしまいました。ギャップあります、すみません;

 リィンの表情はかなり気を使いました。彼女が終始イライラ気味なのは、まだアレックスとフェイズを信用していないからです。弱みを見せたくないので、無理するなという言葉にも反発しております。
 でも全員、それが強がりなことは分かっていて、フェイズとリースがフォローしたのですが、余計にリィンは複雑な気持ちになってしまいました。そもそも、フェイズとリースが良い感じな雰囲気なのも気に入らないのです。いつも一緒だったリースが取られてしまうという・・・嫉妬ですね。

 実はアレックスも、反対側の立場で上の二人が良い感じなのを複雑に思ってます。ただ、そこは大人なので何も言わず。リィンの愚痴を聞いてあげました・・・・・・という展開です。

 ちなみにフェイズは怪力なので荷物持ち係です。RabbitHomeのルークも実は怪力という設定が隠れております。

P023-P024 BindingTower

 塔の中に一人ぼっちの八尋と、部屋で一人泣いている梓。どこを切り取ってもちょっと憂鬱な話なので、簡単に短く済ませました。この話は、まさに中二病をカタチにしたようなものです;

 何もかも信じられない、反発したい。そんな時期は誰にでもあると思うのですが、それが極端に具現化してしまったのが八尋の立場です。全てが要らないと思った結果、何も無い塔に一人きり(実際はカナリヤが一緒ですが)に飛ばされてしまいました。

 八尋の幼馴染の梓も、彼に信じてもらえなかった一人ですが、八尋の帰りをずっと待っています。八尋はイジメにあっていたのですが、八尋が居なくなった今、そのイジメはそのまま梓に降りかかっています。でもそんなことでは彼女折れません。他人に涙を見せたりせず、普段は毅然と生活しています。イジメなんか梓にとってはツマラナイことで、八尋に対しての色々な思いが彼女を縛り付けているようです。

P025-P029 RabbitHome(クレスとセレネ)

 おじい様の部屋再び・・・というのを見て分かって頂けるかが重要なところでした。画面の引きが甘くてちょっと心配ですが・・・;
 今度は部屋に本人が居る、過去の話です。おばあ様も若いです(笑) ここでは、言わせたいセリフが沢山あって、本当はもっと長くなる予定だったのですがあれもコレもと詰め込みすぎるのは良くないので、猫のお話だけに絞りました。猫と名前でピンときて下さったなら嬉しい限りです

 そしてもう一つは懐中時計の中の写真。蓋が2重になっていてそこに写真が隠されていた、というのを表現したつもりなのですが・・・わかり難かったですね・・・;むむ。
 そして記憶から、クレスの少年時代へと飛んでいるのです・・・年齢の書き分けがなんか出来てません。
 少年時代のクレスの周りにいるのは、猫と使用人達です。どこかでアレ?と思って頂けたらいいな・・・と。小さくてわかり難いんですが;

 思い入れが強い部分だけに、少し心残りのある展開になってしまいましたのでどこかでリベンジしたいと思っています。もとよりクレスの少年時代のお話は、おいおい公開していく予定でいます。

P030-P034 RabbitHome(少年とアリス)

 ここに辿り着くまでが非常に長かったのですが、ついに本命の登場です。 この漫画の、謎解き部分(という程大層なものではないですが)もここで明かされています。アリスとの関係。

 手袋を外した少年の手は、透けているのですが・・・ここも表現がわかり難かったですね; 彼が白い手袋を外せない理由・・・というのがここにあります。本当は手を繋ぐときにも透けさせるべきだったのですが・・・;
 実はここで少年はアリスにキスしようか悩んでいます。気付いた人は居ないと思われる微々たる葛藤です; キスは好きだからというよりは、自分が夢の力を貰う為という理由の方が強く、躊躇ったのです。
 キスでなくても、手を繋ぐことでも微力ながら力を貰うことはできます。少年が自分を少年はアリスが遠くへ行かないように見守りながら、また彼女の夢より力を得ているのです。

 ちなみに少年が”また迷子になるよ”と言っているのは、このお話が「LunarMare's Nightmare」の後の話だからです。 本来はこの後、アリスが少年に気付いて色々と会話をする予定だったのですが。
 二人の会話は単調で長く、そして心理描写が大切なのでやはり漫画よりは小説で表現したい、という気持ちが沸いたのと。同人誌として発行した「LunarMare's Nightmare」からの話を強く引き継いでいるため、一部が本を読んで下さった方にしか理解できない会話になる為にカットしてしまいました。日記でネームは46ページ、とか言っていたのに実際が38ページになったのはそういうわけです。

 カットした部分については、また後日改めて同人誌として発行しようと考えております。この二人のやり取りは、やっぱりとても大切なので悔いのないように描写したいと思っています。この場での会話を楽しみにして下さった方には申し訳ないです;

P035-P038 RabbitHome(アリス、目覚め)

 朝は唐突にシンプルに。朝の光の中では全てが希薄です。そして不思議な余韻。
 なんだかまだ夢の中に居るような気持ちを残したまま、日常へと引き戻されていく。寂しくて、悲しいような。でもそれは、また楽しみでもあって。
朝は不思議ですね。

 物語としてはここで終わりになりますが、一番最初に書いたように、まだまだこれは後に続く物語です。どうぞこれからも見守って下さると嬉しいです






さらに漫画表現・技術的な話

 拘った点は、短いページ数で人物の関係を表現すること、世界観を表現すること。そして人物の表情。これは、今の自分の力でできるだけのことはできたと思います。
 勿論、修行すべき部分は沢山あります。表現・描画での反省点も沢山あるのですが・・・;;一番は人物がどうしても大きくなってしまって、中々全体図を描写できていないことですね。あと、無意識に画面を真正面からにしてしまいます。なるべくそうならないように・・・と気を使ってはいたのですが、そう意識したところは逆に同じような構図になっていました・・・。精進あるのみです






さて、ここまで目を通して下さった方には本当に有難うございました。
何か感想や、疑問など、当サイトの創作について思うことがありましたらお気軽にお寄せ下さい。皆様のおかげで創作を続けることができております。どうぞ今後もよろしくお願い致します。